前立腺の病気
前立腺とは?
前立腺は、直腸と恥骨の間にある臓器で、精液の一部はここで作られています。一般的な成人男性の前立腺は、クルミぐらいの大きさ(20ml)です。
前立腺肥大症
前立腺肥大症は、中高年以降の方に多く見られる病気です。一般的に前立腺は加齢に伴って肥大すると言われていますが、最近では高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病との関連も指摘されています。前立腺が肥大すると、尿に症状が現れる場合が多いです。
症状
- 排尿症状
尿の勢いが弱い、尿が出始めるのに時間がかかる(尿を出したくてもなかなか出ない)、尿が分かれる(尿線が分かれて出る)、排尿の途中で尿が途切れる、力まないと排尿できない - 蓄尿症状
トイレに行く回数が多い、尿意を我慢できない、尿がもれてしまう - 排尿後症状
排尿後に尿が残っているような気がする、尿が終わったのに切れが悪い
診断方法
問診、超音波検査、尿流測定、尿検査、血液検査を行います。
治療方法
まずは薬物療法を行い、薬を飲んでも効果が見られなかった症例に対しては内視鏡を用いた手術療法を考慮します。
肥大した前立腺を電気メスで切除する経尿道的前立腺切除手術(TURP)という手術が一般的ですが、近年ではレーザーを用いた前立腺核出術や前立腺蒸散術も行われています。ただし、術後に尿失禁を引き起こす場合や頻尿が改善しない場合もありますので、手術をするかどうかは主治医とよく相談して決めることをおすすめします。
前立腺癌
前立腺癌はもともと欧米人に多い疾患でしたが、現在は日本人の発症数も増加傾向にあります。
検診での診断技術も向上にともない、早期発見が可能となっておりますので、特に50歳以上の男性は、血液検査でPSA検査をすると良いでしょう。
症状
前立腺癌は進行すると排尿症状や骨転移による痛みが現れますが、初期段階では無症状であることが多く、現在は腫瘍マーカー(PSA)の上昇を指摘されて精密検査を行い、発見される例がほとんどです。
診断方法
PSAが4.0ng/ml以上の人には、直腸指診や腹部超音波検査、MRI検査、前立腺生検(組織診断)を行い、前立腺内に癌細胞があるかどうかを診断します。
治療方法
他の臓器(リンパ節や骨など)への転移の有無と現在の進行の程度を調べた上で、治療方針を決めていきます。治療方法は手術(回復術・腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術等)や放射線治療、ホルモン療法、化学療法、監視療法などがありますが、主治医と相談の上、進行の程度や副作用等を考慮して決めることをおすすめします。
急性前立腺炎
尿中の細菌が前立腺に侵入し、感染を起こす病気です。
症状
高熱(38℃以上)や排尿痛、排尿困難、頻尿といった症状が強く出ます。
診断方法
尿検査で尿が感染していないかを調べます。また、直腸指診で前立腺に炎症がないか調べることもあります。
治療方法
抗菌薬の内服や点滴を行いますが、全身状態が悪いと入院が必要な場合もあります。また、内服による治療の場合は2〜4週間ほどを要します。前立腺肥大症と合併している場合や症状が慢性化する場合は、慢性前立腺炎に移行することもありますので、早めに検査しましょう。
慢性前立腺炎
20〜40歳代に多い前立腺の病気です。長時間のデスクワークやストレスから会陰部(陰のうと肛門の間)の痛みや違和感を引き起こします。
症状
会陰部(陰のうと肛門の間)の痛み、下腹部の痛み、股間部の痛み、睾丸の痛み、尿道や陰茎の痛みや不快感、排尿痛、射精時痛、頻尿、残尿感等があります。
治療方法
慢性的に経過することが多く、治療法は確立していません。ストレスを解消することが薬物療法の基本ですが、患者様に合った治療法を選択することが非常に重要です。